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​ぷかり堂の社会見学

​~ 本坊酒造 屋久島伝承蔵 編 ~

「地域に根ざした酒造り」の言葉の通り、その地域の原材料や水、その地域の気温や湿度など様々な要素をかけ合わせ、その土地でしか造れない酒造りにこだわる本坊酒造株式会社。鹿児島県内だけでなく、山梨県や長野県にも拠点をもち、焼酎からワイン、ウイスキー、梅酒までさまざまな種類のお酒の製造をされています。
今回はここ屋久島にある、伝統的な手造り甕仕込みにこだわった屋久島伝承蔵にて焼酎造りの現場を案内していただきました。

本坊酒造

安房川を越え、県道とヤクスギランドとの交差点を過ぎると屋久島伝承蔵ののぼりを発見。車を止めるとすぐに、伝承蔵から一人の男性が出迎えてくれました。こちらが本日案内をしてくださった杜氏の鮫島巧太さん。「杜氏」というのは酒蔵の最高製造責任者のこと。「ここ、屋久島伝承蔵では、1960年より酒造りが行われ、約60年間、今も変わらず伝統的な手法で焼酎造りが行われています。」

本坊酒造

早速、木の引き戸を開けて酒蔵の中へ・・・。
ほんのりとお酒の甘い香りが鼻を抜けます。目の前には大きな機械、奥には甕のようなものが床に埋まっているのがうかがえます。いったいここでどんな作業が行われているのでしょうか?今回は芋焼酎の製造過程を紹介していただきました!
製造はおおまかに表現すると①麹造り②一次仕込み③芋処理④二次仕込み⑤蒸留⑥割水⑦瓶詰・ラベル貼り のような流れで行われます。
今回見学にお邪魔したのは2月初旬。残念ながらこの時期にはすでに仕込みが終わっているとのこと。9月に芋の収穫が行われ、秋から12 月・1月にかけて仕込みが行われるそうです。従って米麹等を実際に見ることはできませんが、使う機械とともに想像力を最大限に膨らませてみていきましょう!

本坊酒造

まずは仕込みから。仕込みの第一歩は米麹づくり。米麹とは…米に麹菌というカビが繁殖したものです。この麹の出来で焼酎の質が変わるそうですよ。いきなり重要なポイント!

こちらの大きな機械はお米を蒸す機械。
仕込みの時期になると1日に240キロものお米を蒸すそうです。米1合が150gだとすると1600合分!?単純計算で3200人前ものお米を一日に蒸すんですね!

麹室

蒸したお米は麹室へ運ばれ、2日間かけて麹菌を繁殖させます。お米にカビを生やす工程ともいえるでしょうか。麹造りに使用する麹菌は白麹菌と黒麹菌の2種類。白麹はまろやかな、黒麹はキレのある焼酎になるそうです。白麹、黒麹とはこの菌のことだったのか!ちなみにこの麹室、仕込みが行われている期間は見学不可!

「麹室は、いわば新生児室のようなところです。麹菌は雑菌に弱いため、衛生面では細心の注意が必要です。」
また仕込み人は、食べ物にも制限がかかるそう。たとえば納豆は納豆菌が麹に繁殖する可能性があるため仕込み期間中は口にできないんだとか。

麹室

この積み重なる木箱のようなものに乗せられて麹菌は培養されます。麹室では温度調節が超重要!
カビが生えやすいように、麹室の室温は30度、麹は37度と24時間厳しく管理されています。ここで驚きなのが温度管理の仕方です!この部屋、実はエアコンなどの空調設備は一切ありません。

麹室

見渡してもコンセントの穴がどこにも見当たらない!!!つまり、ここは自然換気のみで温度調節されているのです。天井を見上げると天窓が複数。室温はこの天窓と扉の開閉で調節されているんだそうです!

一方、麹の温度はというと、こちらも機械は一切使わずに仕込み人がかき混ぜることでちょうど人肌と同じくらいの温度になるように調節しています。夜間も定時に温度の確認と生育のチェックをされているので気の休まる時がありません!「伝統的な手造り甕仕込み」の「手造り」というのはこの仕込み製法のことを言うのだそう。なるほど…まさに手造りでした。反論の余地はないですね。

こうして約40時間たっぷりと愛情を受けて造られた米麹は良質な「酵素」と「クエン酸」を生み出します。

本坊酒造

続いての工程は「一次仕込み」。できあがった米麹に屋久島の柔らかなお水と酵母を加え、発酵させること約1週間。出来上がったアルコールは一次もろみと呼ばれます。
「ここをしっかりしないと、この後に行う芋の発酵もうまくいきません。そのため、この一次もろみをお酒の母と書いて『酒母(しゅぼ)』と呼んでいます。」
お芋が入っていないこの一次もろみは、日本酒のもろみと見た目はほとんど変わらないそうです。香りは甘くバニラのようないい香りがしますが、麹にたっぷりとクエン酸が入っているので舐めると酸っぱいんだとか。興味深い…ですが想像のみ!またこのクエン酸のおかげで、雑菌からの汚染を防ぐことができるそうです。愛情をこめて米麹を造った甲斐がありましたね!

本坊酒造

皆様、ここまでの過程で違和感のある方はいらっしゃいますか?鹿児島といえば芋焼酎!今回も芋焼酎の製造過程を案内していただいています。ですが、先ほど発酵させていたのは米麹…。
あれ?芋焼酎なのにお米なんですか?
「メーカーによっては全て芋でつくっているところもありますが、米麹を使ったほうが芋の発酵がうまくいくんですよ」
なるほど、芋を発酵させるために米麹造りでしたか。というわけで、ここから芋が登場します。
本坊酒造屋久島伝承蔵では2種類の芋を使っています。


◆南薩摩産の黄金千貫(こがねせんかん)◆

島内限定の「屋久の島」はこちらを使用。芋焼酎の本場鹿児島で育てられた皮も実も黄色い芋。焼酎造りの大半で使われているのがこの芋。
◆屋久島産の白豊(しろゆたか)◆

島内限定の「水ノ森」はこちらを使用。名の通り皮も実も白い芋。


平地が少ない屋久島では原料確保が難しかったため、2年ほど前から自社栽培も開始。芋の風味を残すために皮ごと仕込んでいるのだそうです。綺麗に泥を落とし、手作業で品質を確認。苦みのあるヘタや傷んでいる部分は一つ一つ取り除きます。こうして下処理をされた芋は奥に写っている滑り台のような機械で蒸されます。

本坊酒造

手前の銀色のタンクには(こちらの写真は空ですが、実際の仕込みの際のは)先ほど登場した「酒母」と水が入っており、ここに蒸した芋を加わえてさらに発酵させる工程を「二次仕込み」といいます。しばらくすると発酵が盛んになり、もろみが自ら対流をはじめるのだそうです。ブクブクと炭酸ガスが現れるその様は、まるでマグマだといいます。是非仕込みの時期にもう一度来て見てみたいものです!秋にまた見に来ましょう!
ちなみにこのタンクには1200キロの芋が入り、もろみを合わせると約2 トン。すごい量ですね!このタンクでは約1日。もう1度、あの甕壷にもどしてさらに約1週間すると二次もろみが完成します。

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